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ふったらどしゃぶり When it rains, it pours / 一穂ミチ
同棲中の恋人とのセックスレスに悩む萩原一顕。報われないと知りながらも、一緒に暮らす幼馴染を密かに想い続けている半井整。部署は違うが同じ会社の同僚である、そんな程度の関係だった。
しかしある日、一顕が送信した1通のメールが手違いで整に届いてしまった事から、互いの正体を知らないまま、ふたりの奇妙な交流が始まる。

「ふったらどしゃぶり」のタイトル通り、この小説には雨が効果音ともBGMとも取れる形で彩りを添えています。時にはトタンの屋根に落ちる煩い雨音を聞きながらいたずらに焦燥感を掻き立てられ、時には35階と言う天空に近い雨音さえ届かない場所で懐かしく思う。恋人と幼馴染みの関係に悩む2人の距離が近づいていくきっかけには必ず雨が降り、メル友だった相手が会社の同僚だと知った日から、その関係は大きな変化を見せる。

恋人のかおりにセックスを求め、拒絶された一顕が助けを求めたのは勢だった。そして夜中であるにも拘らず勢もそれに応えて一顕の元へ向かう。顔も知らないメル友同士であった関係は、お互いの正体を知ってから現実の友人へと姿を変えていた。お互いのパートナーに「性欲の存在を肯定されたい」と願う気持ちはどうしても受け入れてもらえない。お互いのそんな思いを洗いざらいぶちまけていた相手しか、自分の焦燥感は理解してもらえない。セックスする理由に「自分に何か隠し事をしている和章に秘密を持ちたいから」と言う勢と、今からする行為はかおりに「絶対ばれない浮気」なのだと言い切る一顕。ホテルの枕がやたらと多い事や、歯ブラシがヘンに大きい事や、歯磨き粉が異常に不味い事や、バカ極まりない事を喋りながら2人は体を合わせる。
夜が明けると、2人は会社の同僚の会話に戻りながら朝食を食べ、そのまま別れようとするが、一顕は勢を引き止め、勢もまたそれを受け入れる。まさにどしゃ降りの雨の如くお互いを激しく求め合う時間が続き、際限のない欲望は2人を呑み込み嵐のように翻弄した。
月曜日の朝がやってくる事を知りながら、なおもお互いを求め続ける2人。「どうすんの、俺たち、こんなになっちゃって、どうすんの…」と抱かれながら涙を流す勢に、一顕も答えを持っていなかったし、勢も答えを求めてはいなかった。「俺たち、バカだよ」と言う短い言葉に心の底から納得してしまうほど、離れてしまうには手遅れだと気づいていたからだ。けれど、何も壊さないと最初に約束したとおり、2人は別々の場所へと帰っていく。

マンションへ帰ってきた勢に鎌倉へ家を買って引っ越そうと言う和章。突然の事に返事を保留したものの答えはすぐに出そうもない。一顕だったら何と言うだろうか。勢の頭には週末を一緒に過ごした一顕の事ばかりが浮かぶ。
が、かおりに携帯を見られたと連絡してきた電話を和章が取ったために、勢は一顕と週末を過ごした事を知られてしまう。逆上した和章は勢を無理やり抱いた。
勢の両親が交通事故で死んだ原因は自分にあると、ずっと責め続けてきた和章の口から苦しげに吐き出された「ずっとお前が好きだった」と言う言葉は、勢がずっと心から望んできたものだった。両親を亡くした後ずっと傍にいて勢の心を支え、守ってきてくれた和章。けれど自分の傍にいる事で常に彼は罪の意識に苛まれる。そう結論を出した勢は、心のどこかで依存し合っていた2人の関係を終わらせるため、この家を出ると告げる。それは同時に別れを意味していた。

一顕は勢に自分たちの関係が和章に知られてしまったと告げられる。今までの態度とは違った余所余所しくさで「彼女にばれたのなら謝罪に行くし、慰謝料も払う」と突き放され、和章と寝た事まで打ち明けた勢に一顕は強い怒りを覚えるが、勢の泣き腫らした目元に何かあったのだと気づく。けれど理由を話してくれる訳もなく、呼びかける声に応えることもなく「もう2人で会うのはやめよう」と言って勢は去っていった。

自分の携帯を持って出て行ってしまったかおりから連絡が来た。PM11時きっかりに来たメールをやり取りしながら、一顕はようやくかおりの本心を知る。彼女が一顕と寝たがらない理由は、離婚したかおりの父が原因である事や、セックスを拒んだ後、一顕がどこかへ行ってしまうとわかっていながら動けなかった事。そして勢に送ったメールを読みながら、一顕が1度も自分を責めたり下げたりしていなかった事への感謝の気持ちも。
メールを読んだ後部屋を飛び出してみれば、家にいるはずのかおりは部屋の外にいた。「好きな人が出来ました。別れてください」と頭を下げる一顕にかおりは猛烈なビンタを一発食らわせて別れを告げ、その場から立ち去っていった。
ひとりになってようやくかおりに言った言葉で自分は勢が好きなのかと自覚するけれど、それはまだ酷く曖昧なままそこにあった。

和章と暮らしたマンションを出て一人暮らしをするようになった勢は、人づてに一顕がかおりと別れた事を知る。それが自分のせいだとしても突き放してしまった今はどうする事もできない。が、偶然にもかつての友人である平岩に会った勢は、この再会が一顕のおかげである事を知り思わず涙ぐんだ。優しい一顕。会って好きだと言いたい、好きだと言われたい、その気持ちが梅雨明け間近の雨の日、傘を買おうか買うまいか躊躇していた一顕の後ろから、傘を差し掛ける事になる。
傘を持たないはずだった勢が傘を持ち歩いている。理由が聞きたい一顕に勢は「長いよ」と笑う。引っ越した自分にも積もり積もった話がたくさんあった。
メアドを聞く所から始まるのがいかにもこの2人らしくて微笑ましい。後日談である「ふったらびしょぬれ」へと話は続く。

夏が来て、終わろうとしている今でも付き合ってはいない勢と一顕。お互いに起こった別れ話を聞いている間に告白のタイミングを逃してしまったらしく、相変わらずメールしあう程度には仲のいい間柄だった。体こそすでに許しているのだけれど、心の方が進展する兆しもなく、少々じれったい想いを持て余す一顕。
平岩を交えて3人で会った日、勢のマンションのリフォームが進んでいない事を知った一顕は部屋を訪ねる口実にリフォームを引き受ける。手土産のスイカを冷やすためにたらいを買いに出た2人はその帰り見事などしゃぶりに見舞われ、一顕は勢もまた自分と同じ気持ちでいた事を知る。

雨で始まり、雨で終わる物語。上でも書いたようにこの話の中で雨は不可欠な存在として描かれている。晴れの日描写が余りない所と雨の退廃的な描写がどことなくフランスっぽい?なんて思ってしまったり。
一穂さんの作品ではよく個性の強い女性が出てくるけど、一顕の元恋人かおり、かおりの同僚である彩子もなかなか強烈な個性の持ち主です。特にかおりの悪口を一顕に吹き込む彩子さんはかなりの毒を持っています。わたしは気にならないんですが、BLものに登場する女性が嫌な方もいるでしょう。そんな女性を恋人に持つノンケ男子を上手く料理してくださるのが一穂さんですからw 

今回新レーベルから出版されたこの作品ですが、そのキャッチコピーが「がんばる貴方へ、恋とエロスのサプリメント小説」となっているせいか、ベッドシーンが多めです。一顕と勢も結構赤裸々に男同士のシモネタを話しているし、セックスと言う単語も頻繁に出てくる。一穂さんの今までの作品の中ではかなりの大人向けと言ってもいい。それを抜きにしても、言葉の言い回しや比喩、会話のテンポのよさなどはいつもの一穂さんだなと思えます。
スピンオフ作品もたくさん送り出されているので、きっとこの先で報われなかったもう1人の和章が主人公の物語が出るんじゃないか、なんて思ってるw

有妃 | BL(ゲーム・漫画・小説) | - | -
アイズオンリー / 一穂ミチ
 BL読んでると「こんな病気ってあるんだ…」と思っちゃうような疾患に出くわす事が多いような気がするんだけど、この小説にも出てきます、相貌失認と言う難しい名前の病気が。

岩崎数真26歳。子供の頃は目が見えなくて不自由な思いをしたものの、現在は編集者として働いている。見えなかった頃の名残として、何でも触って確かめる癖がある。
仁科縁(ゆかり)28歳。とある事情を抱え在宅でCGオペレーターの仕事を請け負っている。その事情とは、彼の特殊な病気にあった。

出会いは20年前の夏休み。縁は図書館で1人点字本を読む少年「かず」に出会う。目の見えないかずは本を読んでくれた縁を「ゆかりちゃん」と呼び、2人は次第に仲良くなっていく。しかしかずが目の手術を受ける事になって縁は動揺し、ある事件を起こしてしまう。そしてそのまま疎遠になり、20年経ったある日、叔父である柳井訓の紹介で、岩崎数真という男と出会う。
その岩崎と言う男が20年前の「かず」である事を縁は即座に見抜いたが、数真の方は自分が「ゆかりちゃん」である事に気づいていないようだった。その出会いをきっかけにして、2人の付き合いが再び始まっていく。

縁の病は人の顔を認識出来ない。そのためなるべく他人と会わず、待ち合わせには30分前について相手に見つけてもらい、恋人は作らないで一夜限りの付き合いを繰り返してきた。
叔父で縁の雇い主でもある訓は、縁が子供のころからがとサングラスをかけるようになり、今もそのままでいる。人の顔を記憶しないため、見分けるには必ず目印となるものが必要なのだ。
しかし数真はもう目の見えない少年「かず」ではない。なのに、見えるようになった時は「地獄だった」と言う。その理由が知りたくて、縁は数真と会い続ける。そして言葉の綾から、数真と関係を持つ事になった。
数真は、縁曰く「あのかわいかった優等生少年がどの駅を経由したらこうなるんだろう」と思わしめるほどあけっぴろげなメールを送ってよこしたり、縁と寝る前に女の体についてうんちくを語ったりする。そんな掴みきれない性格なのに、やってみませんかと言われた時、不思議なほど嫌ではなかった。けれど「恋人」と言う特別な関係はいらないと決めている。自分には顔を覚える事もできなければ、美醜さえ判断できないのだから。顔も覚えられないのに付き合いたいと思う人間がいる筈がない、それが縁の考えだった。

ある日、数真は縁の部屋で一冊のスケッチブックを見つける。それは縁が手持ち無沙汰に描いたものだったのだが、数真はそれを気に入り、いつか是非本の装丁に使いたいと言い出す。数真と出会ってから縁の周りは目まぐるしく変化し、一年を過ごしたかのような濃さだ。再び数真と会わなくなったら自分はどうなるのか――そんな寒々しい自問をしてしまうが、縁のそんな思惑を他所に数真は嵐の日でも縁の元へやってくる。
停電した暗闇の中で、数真は目が見えるようになった時の事を縁に話す。目に飛び込んでくるものすべてがおっかなくて、目を閉じても見えるものが瞼の裏で暴れ酷く疲れた事、それでも少しずつ字が読めるようになり、杖は必要なくなり、外を歩いていても同情されなくなった替わりに点字の本は読めなくなった事や、見えている世界と見えない世界を行き来できると思っていたのに見えない世界はなくなってしまい、そして自分の目が見えるのと引き換えに「ゆかりちゃん」はいなくなってしまったのだと言った。そんな数真の告白を聞きながら、縁は自分が「ゆかりちゃん」である事も、数真の顔も覚えていられない事も全てぶちまけてしまいたい衝動に駆られる。

だが恐れていた日はやってきた。数真と行った「100%暗闇を体験できる」イベントで、縁は数真と同じ色の服を着ていた他人を本人と間違えてしまったのだ。
縁は送っていくと言う数真を振り切って自宅に戻り、その後彼との連絡を一切絶ってしまう。再び自分の殻に閉じこもってしまった縁を訪ねて来たのは訓だった。20年前と同じ事を繰り返すつもりかと迫る訓に、縁は「ゆかりちゃん」が「かず」にしてしまった事を嫌でも思い出してしまうのだった。
閉じこもって一週間後、叔父だと思って部屋のドアを開けた縁の前に立っていたのは数真だった。逃げようとする縁に向かって、数真は優しく呼びかけた。「ゆかりちゃん」と。

数真は気づいてるんだろうなぁ、と思いながら読み進めてたから、この辺はさほど驚かなかったかな。ほぼ縁と同じくらいに気づいててなぁんだ、って感じはしましたが。
結構数真の表現が面白いというか、例えが独特な感じ。例えば「「歯医者の怖さを1とするなら、3歯医者ぐらい?」とかねwこの2人の会話の心地よいズレ具合とか、所々に天然ぽさが見られてつい笑ってしまう場面でもありました。
一つ欲を言えば、縁は最後まで前向きに行けなかった節があるから、ちょっとそこが残念かも。ただ訓さんのふりして訪ねて来た数真の事は勘とは言え気づいたんだから、彼にとっては大きな進歩なのでは、と思います。

相貌失認もそうですが、以前読んだBL小説で字を認識出来ない病気を持つ受けの話があったと思ったんだけどなんだっけ、思い出せない…(木原音瀬さんの「秘密」でした。ディスレクシアと言う学習障害です

有妃 | BL(ゲーム・漫画・小説) | - | -
きみが好きだった / 凪良ゆう

実家は開業医で家族仲も良好、成績優秀で品行方正を絵に描いたような高良晶太郎(高2)。高良とは対照的に、女子にモテて基本来るものは拒まない軟派な諏訪直己(高2)。
はとこでもある諏訪に、ある日恋人として紹介されたのは1つ上の先輩・真山南だった。人目を引く外見でありながら性格はぶっきらぼうでとっつきにくい真山だったが、高良は徐々に惹かれていく。次第に3人で行動する事も多くなり、昼休みに屋上に集まっては弁当を食べるのが彼らの日課になった。
奔放な性格の諏訪は、しょっちゅう浮気沙汰を起こす。内心傷つきながらもそれを受け入れている真山。そんな真山をいつも傍で見ている高良は自分を好きになればいいのにと、好きな気持ちを必死に押し隠している。夏に3人で諏訪の知り合いのペンションにバイトに行った時、高良は諏訪と真山が抱き合っている所を見てしまい、もはや真山への気持ちは限界に達する。夜花火をしている最中に高良は自分の思いを告白し、諏訪の目を盗んで真山にキスをするが、真山からは「お前とはもう2人で会わないから」と言われてしまい、2学期以降3人が一緒に過ごす事はなくなっていった。
諏訪は諏訪で浮気相手と別れたかと思うと、やはり1番好きなのはマヤちゃんだと、高良の前で臆面もなくのろける始末だ。不安定な家庭で育った諏訪は1人になる事を極度に嫌い、しかも言う事は矛盾だらけで屈折している。真山はそんな性格を見抜いていたのか、諏訪がどんなに浮気しようと何も言わなかった。しかし高良はそんな真山の気持ちを慮って、諏訪と言い合いになってしまう。
が、真山の母の再婚や諏訪の両親の離婚などが原因で別れは唐突にやってくる。大人の都合で振り回される真山と諏訪は、理不尽に思いながらもどうする事も出来ず、やりきれない思いを抱えたままそれぞれの道へ別れていく。残された高良が、いつも3人で一緒にいた学校の屋上で1人で思い出に浸る姿がやるせない。少年と言うには大人すぎて、大人と言うには若すぎる、そんな岐路に立ち、真山と携帯越しの会話をする高良は思う――笑ってしまうくらい手が届かない。

前半の高校時代は高良の視点で綴っていて、後半は13年後真山と高良が偶然再会する所から真山視点でスタート。

母親の都合で高校卒業を待たずに離れる事になったかつての街に帰ってきた真山。結局母親は当時の相手と離婚し、再婚する事になった相手の口利きでが彼が経営するしゃれた居酒屋の雇われマネージャーになる。
そんなある日真山の店に偶然にも現れた高良。三人がバラバラになった後、彼は高校を卒業して医学部に入り、大学病院に勤めた後実家の眼科を継いでいた。
高良は大人になった今でも真山に対する気持ちは変わっていなかった。諏訪がいた時とは違い、お互いにフリーな2人の付き合いが始まる。
しかし高良は医者の跡取りで、自分はしがない居酒屋の店長だ。高校生だった時とは違い、好きだというだけで突っ走る事はできない。しかも恋人が男だなどと知れたら、この街での高良の立場はない。彼の背負うものの大きさを知る真山の心は揺れる。ずっと傍にいて欲しい――その言葉を飲み込みながらも引っかかるのはいつまで高良の傍にいられるのか、知りたいのはその事だ。そんな時、真山のもとに一本の電話が入る。

久しぶりに会った諏訪は何も変わっていなかった。ふわふわとした風来坊のような生き方をしている彼は、付き合っていた時と何も変わらない顔で真山を「マヤちゃん」と呼んだ。成り行き上、入院している高良の父の見舞いに付き添わされた真山は、病室で見知らぬ女性連れの高良と鉢合わせしてしまう。
その夜店に現れた高良は、何故真山が諏訪と病室にいたのかを訊ねなかった。真山も高良と一緒にいた女性の事を合えて口には出さない。高良との関係がそこで崩れてしまうのを恐れて、1番聞きたい事に触れられない。その空気が真山に、今まで自分が付き合ってきた相手に物わかりのいい性格を演じていた事を思い出させる。
惚れた相手には弱く、言いたい事もあるのにいつも飲み込んでしまい、結果関係をだめにして来た自分の恋。諏訪の時もそうだった。けれど高良との関係はそんななし崩しのように終わりたくない、その想いが訊ねてきた高良を追い返す事になる。それが結婚するかも知れない高良のためだと言い聞かせながら。

2人で温泉に行った時高良は「俺が好きなほど、マヤちゃん先輩はおれを好きじゃないよね」と言った。それでも自分の事が大好きだと言った高良。好きだといわれる事にどこか甘えていて、自分の気持ちを口にした事が殆どなかった真山は、諏訪を見送りに来た高良に自分から「お前が好きだ。ずっと傍にいて欲しい」と乞う。高良もまた、自分達の前に現れた諏訪の存在に怯えていた。けれど真山を取られるのではないかと言う思いは杞憂に終わり、3人はいつ叶うともしれない約束を交わし、再び別れる。

この話は悪役らしい悪役がいない(いや、どうしてもいる必要はないんだけど…)高良は元々の性格も含め、育ちのよさから来る正義感で物事を判断している所はあるけど、基本真っ直ぐで素直な性格。
諏訪は家庭の問題もあってとにかく寂しがりやで、常に誰かと一緒にいたい、1人になりたくないという気持ちから浮気に走るんだけどそこに悪気はなく、みたいな。まぁ悪気がないからと言って何やってもいいって訳じゃないけどねー。
真山も家庭環境が複雑で、弟妹はそれぞれに父親が違ってて、そんな2人の世話をしながら、自身もバイトをしながら家計を支えている。ゲイである事は自覚してて自分の気持ちを受け止めてくれた人にはついほだされてしまう人のよさがある。
ストーリー自体は淡々と流れていく感じだけど、誰しもが感じるであろう学生時代のアンバランスさや危うさに共感できると思う。そして大人になっても恋に揺さぶられる心のあり方も。
何にせよ、諏訪の行く末を案じている読者はさぞかし多かろう。彼にも丸ごと受け止めてくれる人が現れる事を願っています。

今回も表紙買いかと聞かれるとはい!と言っちゃいますが(おい)凪良さんの小説にはわたしの好きな方々がイラストを担当されている事が多いのです。しかもお話にハズレがない!(ここ大事)

有妃 | BL(ゲーム・漫画・小説) | - | -
花のみやこで / 宝井 理人
 「花のみぞ知る」で御崎の所属する研究室長だった辻村基晴教授が主人公のスピンオフ作品。
他に有川と御崎のその後を描いた「花のみごろに」、短い描き下ろしを3本。

由緒ある辻村医院の次男として生まれた基晴。医者の息子でありながら、彼は農学科へ進学する。所属する事になった研究室には、幼馴染みで親友の蓮見晶がいた。
幼い頃、自宅の庭を熱心に覗く少年がいた。それが晶で、植物に興味を持っているらしい晶を、基晴がこっそり庭へと招き入れた事から、2人の付き合いは始まった。
お互いの住む世界を知る事で2人の仲は急送に縮まっていき、やがて基晴は自分の中の晶への感情が恋であることを知り告白するが、受け入れられずに終わってしまう。
芸妓遊びを嗜む一方、晶への想いを断ち切れない基晴。そんなある日の事、晶に一緒に帰らないかと誘われる。帰り道の神社では幼い頃一緒に行った縁日が開かれており、2人は童心に返って楽しむ。こんな風に笑っていられるのなら、いっそ友人でもいいかと考える基晴だったが、帰り際晶にキスされ、封印したはずの気持ちが再び湧き上がってくるのを感じる。

晶の気持ちを確かめたい基晴は芸妓遊びをきっぱりと止め、その足で晶の自宅へと向かう。お前の事が好きだ、と再び告白する基晴に、晶は大学を卒業したら親の決めた許婚と結婚する事になったと告げる。

相思相愛なのに、時代が時代(辻村先生のお年を考えると終戦後くらい?)なので、駆け落ちなんて無理だっただろう。しかも男同士とか今の時代以上に理解はないし。「無責任に言えるほど子供ではなかったし 責任が取れるほど大人ではなかった」と言うモノローグが哀しい。それがせめてもの「忘れられない4日間の駆け落ち」だったのだけど。
結婚式の朝、神社でひたすらおみくじを引く基晴。晶はおみくじを引くと必ずと言っていいほど大凶ばかりだった。神社の狐の口に大吉のおみくじを挟んでおき、それを発見した晶は涙する。「お前の事を忘れられないようにして欲しい」と言う願いを、最後の餞にして基晴は叶えてくれた。

何度かの季節が巡り、ある春の日1人の生徒が辻村の研究室を訪ねてくる。待ちきれずに来てしまったと言う彼の名は御崎紹太、結婚し御崎と姓が変わった晶の孫だった。
「花のみぞ知る」の中で「祖父はとても厳しく寡黙な人だった」と御崎が言っているが、この話の中に当てはまる印象はない。高校生の御崎に自分だけの温室の在り処を教えたり、相変わらず植物を愛している人だったのはよくわかる。結婚後はお互いが直接会うことはなかったのかもしれないけど、植物の研究を通じてどこかで繋がっていたのならいいなとは思う。

「花の見ごろに」は有川と御崎の後日談。相変わらずお互いの事が大好きで、いっしょにくらしているのに夢にまで出てくる存在になっているらしい。有川の家に御崎が招かれる話で、有川の姉真希がなかなか強烈なキャラで登場している。本人にまるで悪気のない所がまたおかしいのと、そんな娘を前にして全く動じない有川の父母はもはやさすがとしか。が、すでに両親のいない御崎には、そんな明るい有川の家庭に戸惑うものの、久しぶりに大勢での楽しい時間だったようで何より。それと、猫に妙に懐かれておたおたしてる御崎…笑
今回は有川に思いを寄せる依頼人が出てきたりして、御崎が密かに「もし有川と別れるような事になっても〜」みたいな事をつらつら考えていたりするんだけど、不意打ちの指輪とプロポーズ来たよ!
それと、有川トレンチコート似合うね…大人になったね…

「練習」と言うおまけ話では御崎の植物オタクっぷりが全開で大変面白かったですw
有妃 | BL(ゲーム・漫画・小説) | - | -
リバーズエンド / 木原音瀬
 遅まきながら昨年11月中旬頃から木原さんの作品に嵌まりだして、色々と読み漁っています。
以前「薔薇色の人生」を読んだ事があったのですが、その時は何故かスルーと言うか、ああいい話だよね、くらいで終わっちゃって。
新たなきっかけは講談社文庫から出た「箱の中」だったのですが(続編である檻の外も収録)、ノベルズで出ていた「檻の外」に二人のその後の話があると知って、購入してしまいました。悲しいけれど、生涯に渡って思いを貫いた二人の姿が描かれていて、とてもよかった。
その後、「セカンド・セレナーデ」「さようなら、と君は手を振った」「月に笑う上・下」を経てこの本を手に取りました。順番から言えば「キャッスル・マンゴー」から読むのが良かったのかもしれませんが、特に不都合は感じませんでしたね。収録されている話がコミックと多少上下するけど。

とにかく高校生十亀の境遇が酷すぎて、いつホームレスに戻ってもおかしくないくらいの困窮ぶり。
子が親の借金払う義務はないんだからさっさと自己破産しちまえよと思ったけど、姉の発言を見る限り多分そんな知識もないんだろうなと思える。
母は十亀が幼い時に行き倒れて死に、父は飲んだくれのアル中で末期がんと言う救いようのない家庭だからか、その日一日生き延びれたら上出来、みたいな思いで毎日を過ごしてるわけです。昼ご飯も満足に食べられなくて、OLが捨てていった食べ残しのハンバーガーを拾って食べることに何の抵抗もない。しかし偶然にも同じクラスの二宮にその現場を見られたことから、二人の係わり合いが始まります。
毎日の食べ物にも事欠く状態の十亀を知った二宮は、机の中にこっそり食パンを入れておいたりして何かと世話を焼いてくれるなかなか気のいい男子。十亀にとって、同年代の友人と過ごす事は思わぬ癒しをもたらすのですが、過酷な運命が十亀を待っていました。
何もかもを失くし、最後の砦だった二宮との友情も自分で壊してしまい、バッグ一つで逃げるように上京した十亀。大きな喪失感から「何者にも何事にも執着しない」を心に刻み、職を転々としながらやがてAV監督に治まり、いずれは映画を撮りたいと思うようになります。そのきっかけは二宮の家で見た「リバーズエンド」と言う映画だったのですが、14年の時を経て二宮と再会し、彼が少しも変わっていないことに安堵しながらメールアドレスを交換します。
別れる時の「しあわせに なれ」と言う十亀の不器用な言葉が何とも言えない。「そっくりそのまま、お前に返してやる」と言った二宮もとても彼らしいと思う。
最後にキャッスルマンゴープロローグと題して、漫画が4P記載されていますが、これが本編へ繋がっていくのだと思うと胸熱ですね。

書き下ろしは「god bless you」。十亀が関わる映画撮影の話が中心ですが、これが面白くて一気に読んでしまった!十亀の目を通して映画業界を見ているので淡々としている中で、映像にかける十亀自身の考えがちゃんと見えてるんですね。小道具の磯野がいい味出してます。二宮といい、こう言う少々口は悪くても裏表ないタイプと合うのかもしれないなぁ。しかも結構世話好きだし。
万は最初と最後辺りくらいしか出て来ませんが、この「リバーズエンド」と言う小説は十亀の物語と言う見方をすればそれもよしかなと。ちゃんと恋人同士らしいこともしてますし(ただその頻度が少ないと言うだけで←)
いちゃいちゃが物足りないと言う方も勿論いると思いますが、わたし個人としては「god bless you」はとても興味深く読みました。十亀が是非映画監督としてメガホンを取っている所を見たいものですが、どうなんでしょうか。

「キャッスルマンゴー」は高校生の万の物語。こちらとはまた違った視点で楽しみました。葛藤に継ぐ葛藤でようやく結ばれる所が木原さんらしいの、かな?小説を読んだ後だったので、十亀の言葉の裏がわかって、なるほどねと思ったり。
「不運ではあったけれど、不幸ではなかった」この言葉が今まで苦難の連続だった十亀の人生の結論なのでは、と思います。新しい関係を結んだ彼らの人生は続いていきますが、これからもお幸せに!と言う事で。

有妃 | BL(ゲーム・漫画・小説) | - | -
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