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Call my name
初ウェブカレ二次創作。

オムライス出た記念に何か書こうかと前から思ってたんですが、何とか形になりました。
「先生と傘」と「オムライス」が元になってます。まるっと、じゃないですけどね。
便宜上弟が出てきてますが、それだけです(笑)

主人公の呼び方は「わたし」になってます。ちなみにドリームではありません。


では、何見ても大丈夫!&心のひろ〜〜〜い方、どうぞ。



◆Call my name

「あれ…?その傘」
その日の朝、教室に入り自分の机まで行こうとしていた足を止めたのは竜士くんだった。

遅刻サボりは当たり前(だが常に学年10位以内の成績をキープしていると言う謎付き)、その彼が珍しくも予鈴がなる前に教室に、しかも自分の席についているという事がすでに驚きだったが、赤い髪を後ろでポニーテールに束ねている彼の目は、わたしの左手にある傘にじっと注がれている。
「傘が、どうかしたの」
「その傘、兄貴のとよく似てんなーと思ってさ」
お互いの持ち物に対して、そんなに関心などないと思っていた。学校では教師と生徒の関係を強調しているが、やはり兄弟だなと思う。
「当たり。実は昨日、綾川先生に借りたんだ――」

委員会活動を終えると、午後一番から降り出した雨は本降りになっていた。水溜りになった校庭を見ながらわたしは考えていた。このままやむのを待とうか、それとも強行突破するか――ただ、走って帰るにはいささか雨脚が強すぎて、瞬く間にびしょ濡れになると言うリスクもある。
そんな事を考えながら、植え込みにあるアジサイの花を眺めていた。アジサイは雨の滴に花びらを叩かれながらもそれを喜んでいるように見える。別名「七変化」とも言うのだと、いつぞやの天気予報で言っていた。
「――おや、こんな所でどうしましたか」
誰もいない昇降口の天井に、綺麗なテノールの声が響いた。聞き覚えある声――季節外れの転校生としてこの学校にやってきて以来、国語の授業のない日には物足りなさを感じるほどになっている事は、わたしだけの秘め事だ。
「早く帰らないとダメですよ。もうとっくに下校時間は過ぎていますから」
「はい、わかっていますけど――」
近づいてきた先生の顔を見た後、そのまま校庭へと視線を移す。綾川先生はああ、と小さく声を上げ、同じように雨の降りしきる校庭を見つめていた。
「傘は…?ないのですか?」
「はい、今朝急いでいて、持ってくるのを忘れてしまったんです」
なるほどね、と言う先生の声はいつも穏やかで、どんな時でもそれが変わる事はない。それはわたしにとっていつも密かな安心感をもたらしてくれる。
クラスメイトたちのノリのいい会話は、マイペースといわれるわたしにはテンポが速すぎると思う事も少なくない。勿論今時の言葉だって全く知らないという訳ではないし、現役の高校生なのだから相手に合わせて会話もする。けれど、時には耳障りで疲れを感じる事もある。
国語の授業に先生の朗読を初めて聞いた時、まさに聞き惚れるという体験をした。思わず教室を見回したけれど、同じように感じている生徒は他にいなかったと思う。
大きな変化を求めたがる高校生にとって、詩の朗読など単に眠いだけなのかもしれない。実際顔を俯けて眠りに入ろうとしている生徒もいた。
その時わたしの中に浮かんだのはあまりに突拍子も無い考えだった。しかしそれ以外にこの気持ちを表す的確な言葉は無い様に思えたけれど、学校にいる限りそれは無理である事もわかっていた。
「そうですか…それは困りましたね」
「え?」
思考が断ち切られ、思わず先生の顔を見上げると、そこには本当に困った顔をした先生がいた。
「送っていってあげたいのですが、今から職員会議ですからね…終わるまで君を待たせておくわけにも行きませんし」
「送って、って、いえ、そんな事は…」
まずいでしょう、と言う言葉を飲み込む――先生が生徒を車に乗せる。もし誰かに見つかってしまったら面倒な事になるのは、誰にでもわかる。
「では、これを貸してあげましょう」
返すのはいつでもいいですよ、と言いながら差し出されたのは、男物らしい折りたたみ傘だった。
「え?これって、先生のですか?」
「いいえ、備品ですよ。君のような生徒は結構いますから」
そう言って笑みを浮かべる先生から傘を受け取りながらしかし、と思う。学校の備品にしてはやたらと高級感の漂う傘で、持ったまま固まってしまうわたしに対し、それじゃ気をつけて、と先生は踵を返した。
「あ、先生!あの…」
「では、また明日。風邪を引かないようにしてくださいね」
そっけないくらいの去り方だった。先生と生徒ならそれは当たり前の接し方なのに、改めてそうされると、何だか複雑な気持ちになった。
暫くその傘を見つめていたわたしは、そこに残っている事も出来ず、雨の中帰途についた――それが昨日の話。
ところが話を聞いていた竜士くんのセリフにわたしは耳を疑った。
「へぇ、それで兄貴今日熱出したのか」

え、と言ったきり、わたしの右手は傘を落としそうになり、実際落としてしまう。

「どういうこと…?じゃ、先生今日はお休みなの?」
「めったな事じゃ寝込んだりしないんだけどな、兄貴。ここんとこ元々帰りが遅かったし、仕事も持って帰ってきてたくらいだからなー。疲れも溜まってたんだろ」
更に車も月曜日から車検に出してるし、と言う言葉で、自分が先生が差して帰るはずの傘を奪ってしまったのだと悟った。
「おいおい…お前がそんな顔深刻な顔する事ないんじゃね?兄貴が好んでそうしたんだから」
「好んで、って…」
「そりゃ、普通自分のクラスの生徒が困ってたら助けようとするだろうがよ?」

ふと視線を移した窓の外には、昨日とはうって変わったように綺麗な青空が広がっている。
わたしは竜士くんに向き直ると、言った。

「ねぇ竜士くん、代返お願いしていい?」
「は?何だそりゃいきなり」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする竜士くんにお構いなしに、わたしは笑った。
「先週してあげたじゃない。今日はわたしの番ね。じゃ、よろしく!」
訳わかんねぇぞお前!と言う声を華麗にスルーして、教室を飛び出した。行く先は勿論決まっている。

緩やかな坂を上りきった小高い場所にある瀟洒なマンション、地上から3度階段を登った一番東側、それが先生とその弟が住む部屋。しかし今は先生しかいない。
梅雨の中休みの日差しはなかなかに強烈だ。弾んだ息を整えた。
「…君でしたか」
開口一番、ドアを開けた先生が発した言葉はそれだった。驚いてもいない、かといって嬉しそうでもない、目の前にいる生徒への言葉。
「今は学校のはずでしょう。と言う事は…」
皆まで言わせず、わたしは頭を下げた。
「ごめんなさい、先生。先生が熱を出してるって竜士くんに聞いたら、何だかいてもたってもいられなくなってきて、来て…しまいました」
ごめんなさい、ともう一度言って顔を上げると、そこには笑みを浮かべている先生の顔があった。
「わざわざお見舞いに来てくれたんですね。学校をサボったのは感心しませんが、その気持ちは嬉しいですよ。ありがとう」
「…先生」
「上がって行きますか…?」
お茶をご馳走しますよ、と言う他愛も無い言葉が嬉しくて、わたしははい、と勢いよく頷いた。


ベッドの上には読みかけらしい本が伏せてあって、先生が眠っていた訳ではないことを教えてくる。
それだけの事に心臓がドキッとして目を逸らしてしまう。寝てなくていいんですか、と言うわたしの問いかけに、先生はゆったりと微笑んだ。
「今朝は体がだるかったのと微熱があったので、大事を取って休んだだけです。とりあえず立て込んでいた進路指導も落ち着いて緊急を要するものはなくなりましたから」
どうぞ、と差し出されたグラスはアイスティだった。火照った指先にグラスの冷たさが気持ちいい。先生もグラスを手にして、わたしの隣にすとんと腰を下ろす。
「さて、何か聞きたい事があるんじゃないですか?」
いきなりの言葉に面食らってしまう。そんなに顔に出ていたのだろうか。先生はくすりと笑った。
「君の目は好奇心豊かですからね…確か竜士もそんな事を言っていましたが」
「そ、そんなに先生のことじろじろ見てましたか、わたし…」
「そうではありません。不躾なのと人に興味を持つのとは違うでしょう?」
ここは教室ではないのだ、と唐突に思った。その他大勢の生徒ではないわたし。すぐ横に、息がかかるくらいの距離に、先生はいる。
そう思った途端何だか息苦しい思いに囚われ、わたしはそっとため息をついた。聞きたい事――
「先生、どうして…」
「はい」
「ご自分の傘を貸してくださったんですか…?自分が困るってわかっているのに」
意外な質問だとばかりに、先生は口元に笑みを浮かべた。
「あれは備品だといいませんでしたか?」
「あんな高級な備品が、学校のものな訳ありません」
「学校の、とは誰も言っていませんよ」
煙に巻く発言に、思わず先生の顔を見た。
「私個人の備品ですよ。いわゆる置き傘というやつです――それを誰に貸そうと、私の自由ですからね」
はぁ、と言うのが精一杯だった。もしかしてからかわれている?――横にいる先生はいつもの顔を崩していない。
「でも、置き傘なら元々1本しかないじゃないですか。それを貸してしまったら…」
いいのですよ、と先生は言った。
「私が帰る頃にはもう小雨でしたし…あの土砂降りの中、もしあのまま帰らせていたら、今日ベッドの中で大人しくしているのは君の方でしたよ」
それは理由になっているようでなっていない。不意にそんな考えが心の中に沸いて来た。
傾けたコップの中で氷がからん、と音を立てる。
「ふふ…納得がいかない、と言う顔ですね」
「わかりますか…?」
「これ以上はね…まだ君が私の生徒である以上、言えません」
言ってはいけないんです。心なしかそう繰り返した先生の横顔に、寂しげな色が差した。

――ちょっと手を貸してください。
その返事を待たないまま、先生の手が伸びてきて右手を持っていかれる――わたしの手は先生の頬に当てられていた。

「せ、先生…?」
「…ずっとコップを持っていたでしょう?君の手が冷たくて気持ちいいです」

暫くこうしててください。
そう言うと先生はわたしの手に縋るように自分の手を重ね、目を閉じた。

外は静かだった。時折聞こえてくるのは車のクラクション、鳥の鳴き声、それくらいしかない。
まるで囚われの身のようだと思った――囚われてもいい、とはさすがに口に出来ないけれど。

どのくらい経ったのか――やがて目を開けた先生によって、わたしの手は自分の元へと戻される。
「すみません、ちょっと度が過ぎたみたいですね」
一連の出来事が唐突過ぎて、その言葉にもすぐには反応できなくて、わたしはただ俯いてしまう。こんな時、大人の女の人だったらどうするだろうか。わたしはまだまだ子供だ。手を握られても固まってしまうしかない。
けれどそれを見透かしたように、先生は静かな声で言った。
「無理して大人になる必要はないのですよ――そう、もう少し」

生徒のままでいてください――君の事をもっとよく知るまで。

「せ…先生、あの!」
何か言わなければ、と意気込んで言葉を発したものの、もう先生は普段と変わらない顔に戻ってしまっていた。
「はい、何でしょう」
「あ、あの…」
「そう言えば、君はいつも私の朗読を熱心に聞いてくれていますよね」
「…え?」
「生徒である君に言う事ではないと思いますが、許してください…正直あんなに熱心に聞いてくれるとは思っていませんでしたので、少々以外でした。とても嬉しかったですよ」
「…気づいてたんですか?」
「気づかないとでも思っていたんですか?」
逆に問い返されてしまう。先生は笑いを交えながら更に言った。
「あんなに見つめられたら、穴が開いてしまいそうですよ」

まるで紫陽花の花の色のように表情が変わる、そんな君の様子は。

「…先生」
「はい」
「人が悪いです。密かに面白がってたんですね、ずっと」
面白がってなどいません、と即答された。
「とても、可愛かったですよ…出来ればその色々な表情をそのまま取っておきたい、と思うほどには」

先生、とこれで何度目なのかわからない「先生」と言う言葉を、わたしは繰り返した。我ながら随分間抜けに聞こえるものだ。
「ずっとこのまま…聞いていたいと思うような声、だったんです。先生の声が」
「お褒めに預かり、光栄ですね」
癒しとか、そんな広く浅い表現ではない。そう、もっと個人的な理由だった――そんな気持ちが生まれるなんて自分でも予想外で、酷く面食らったそんな記憶。

先生の声で、苗字でなく名前を呼ばれたら、どんな気持ちがするのかな、って思ったんです。

「先生、お願いがあるんです」
「何ですか?今は君だけの先生ですから、何でも言う事を聞いてあげますよ」
「一度でいいから、名前を呼んでください――生徒ではない呼び方で」




そんな事ですか、と彼は笑い、その通りにしてくれた。


ただしその後彼の顔は教師のそれに戻って、さぁ学校へ行きなさい、と言われたのは言うまでもない。


-END-

(Image illust :mamiya  Thank you very much!!)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ども、お粗末さまでしたーー!

これはメッセの中で生まれた話です。
「教師と生徒の恋に悩む先生」と言うのがテーマだった…はずなんですが、あれ??
先生楽しんでませんか?あれ?
ま、まぁ、その辺は自分フィルターで読んでいただけると…ゴニョゴニョ…

で、例によって例の如く、長々しちゃってちーっともSSじゃない!
ダメなんだ。書き始めるとあれもこれもって入れたくなっちゃうw欲張りですから。

最後に。
この話は、いつもメッセで私のくだらん乙女話をマリアの如くひろ〜〜い心で聞いてくださるmamiyaさんに捧げます。
日ごろの疲れが少しでも癒されるといいのですが…余計に疲れたらごめんなさいw

それでは、読んでくださった皆さん、Grazie!!

 
7/23 :イメージイラスト追加。

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